一般財団法人 阿部 亮 財団

こども医療センターで小児がん治療を開始してから1年が経過しました

ジャパンハートから活動報告が届きました

こども医療センターで小児がん治療を開始してから1年が経過。
さらに多くの命を助けるために、小児がん病棟の拡張、抗がん剤キャビネット設置の工事が始まりました。

今月の活動トピック

小児がん病棟拡張・抗がん剤キャビネット設置のために小児病棟一室の改装工事が始まりました。
(抗がん剤ミキシング専用部屋の壁を設置している様子)
ジャパンハートこども医療センターで小児がん治療を開始してから1年が経過しました。1年間で累計28名の小児がん患者さんに治療を行うことができました(7月末時点)​
治療中に輸血が必要な小児患者さんが増加していることに伴い、輸血時に注意しなければならい副作用等についてのレクチャーを行い、輸血に対する理解を深めました。
TOYOTA KAIZENチームが連携病院と当院のスタッフと一緒に、病院事務の業務効率化と受付~診察の動線を見直しながら、患者さんにとってよりよい病院にするための改善活動を行っています。
九州大学の小児外科チームが、昨年12月、今年5月に続き8月も来院し、胆道閉鎖症、小児がんの生検、その他の小児外科疾患の手術を合計11件行って下さいました。
一次救命処置(BLS)の演習を近隣のヘルスセンターで行いました。昨年は教わる立場だったカンボジア人看護師たちが、今回は講師として、地域住民へのBLS普及に取り組んでいます。

今月の活動実績 まとめ

救われた命 7名

◼ ジャパンハートこども医療センターの設立以来、当院の医療活動によって救われた患者さんの数は1年間(2018.8~2019.7)で100名を超えました。
◼ 今月は、7名の小児患者さんの命を救うことができました。

がん新規入院患者数 2名

◼ 今月は2名の小児がん患者さんの入院を受け入れました。
◼ 昨年の同時期は5名の患者さんを受け入れています。これは、国内の病院で治療を受けられないままとなっていた患者さんが集まったためです。
◼ 小児がんは発症確率が低いため、半年前より1~2名と横ばいの傾向が8月も続いています。今月の推移は妥当な推移だと考えています。
◼ この2名の小児がんの患者さんをはじめとする計7名の患者さんについて6ページ以降でご紹介します。


外来診療数 233名

◼ クメール正月(4月)後の5月以降、4か月連続で220件以上の外来診療数を記録しています。
◼ また、今月の外来診察件数は昨年同月より25%増加しました。
◼ 患者さんへのインタビューから、徐々に口コミが、地域で浸透していることが主な理由であると分析しています。


入院患者数 28名

◼ 今月の入院患者さんのうち25%は、デング熱による入院患者さんでした。適切にケアすることで計8名の患者さんの重症化を未然に防ぐことができました。
◼ 前月と比較し、8月の入院患者数が減少した主な理由は、下記の2点が考えられます。
①デング熱の流行のピークが過ぎたことで、当院に入院した患者さんが半分に減少したこと。(7月:16名 → 8月:8名)
②8月に実施した手術件数が先月よりも少なかったことに伴い、入院した患者さんの数も減少したこと。

手術件数 18件

◼ 今月の主な手術は陰嚢水腫(6件)、停留精巣(3件)、陰茎の奇形(1件)の泌尿器疾患及びヘルニア(3件)で、合計13件行いました。
◼ 今年7月及び昨年8月は地方の連携病院先で小児外科医による手術活動を行ったため例外的に手術件数が増加していました。
◼ 泌尿器疾患の手術を待つ患者さんは多く、来月以降も順次手術を行っていきます。

ソバットパンニャくん

年齢:1歳7か月
病名:胸部神経芽腫
神経の細胞にできる「がん」です。 神経芽腫は、小児期にできる腫瘍の中で白血病、脳腫瘍についで多い病気です。 特に、5歳以下の子どもの発症率が高いとされています。
家族構成:父、母、姉1人

ソバットパンニャ君は、病院から車で約5時間離れたシェムリアップ州出身です。
生後6ヵ月の時から、息苦しそうにしていたので、何度も病院に行き、生後10ヵ月の時に胸部に腫瘍があると言われました。1歳2ヵ月となった今年5月に手術を行い、検査の結果、神経芽腫であることが判明しました。それまで通っていた病院ではがんの治療ができないため、プノンペン市内の病院を紹介されましたが、経済的理由から行けずにいました。お父さんがSNSでその現状を投稿したところ、無償でがんの治療をしているジャパンハートの存在をコメントで知り、受診を決めました。入院時には、胸部の腫瘍が大きくなり、神経を圧迫し両足と左手に 麻痺がありました。抗がん剤治療を始めて症状は改善しつつあります。

ナリーちゃん

年齢:13歳
病名:悪性ラブドイド腫瘍(右鼠径部)
(がんの進行が非常に速く、現在、日本であっても治療が困難な腫瘍)
家族構成:父、母

足のつけ根が腫れ、痛みがあったため、自宅近所のクリニックを受診したところ、プノンペン市内の大きな小児病院を紹介されました。そこで、今年6月中旬に手術を受け、腫瘍をほぼ摘出しました。手術の3日後に退院しましたが、また同じ個所が腫れだし、強い痛みがあり6月末に再受診しました。しかし、手術した際に摘出した組織を生検した結果、悪性のがんであることが判明し、その病院では治療を 行うことは困難だったため、当院を紹介されました。
8月の来院時にはすでに治療が難しい段階まで、がんが進行していました。また、腫瘍の部分から出血している上に、飲食ができない状態だったため、来院時には重度の貧血状態でした。当院では、輸血をしながら痛みを緩和するケアを行いました。

モッチターちゃん

年齢:6歳
病名:デング熱
重症化しうる病気のため、医療者による経過観察が必要です。
家族構成:父、母、姉、妹、弟の6人家族

小学1年生のモッチターちゃんは、ある日、息苦しさ、食欲不振等の症状を訴え、近所のクリニックを受診しました。そこで処方された薬を飲みましたが、症状は改善されませんでした。そこで、ジャパンハートこども医療センターの医師の治療に効果があり、無料で治療を受けられると隣人から聞いた母親が、モッチターちゃんを連れて受診しました。数日間の点滴を行い、症状が改善したので、無事退院しました。

スレイナイくん

年齢:11歳
病名:デング熱
家族構成:父、母、妹2人

スレイナイ君は、当院から約10km離れたところに住んでいます。生後1ヵ月の時に受けた目の手術の影響で、元々意識障害があります。そのため、学校には通っていません。
今回は高熱が出たため、知り合いの紹介で知っていた当院を受診しました。検査の結果、デング熱と診断されそのまま入院しました。入院期間中はお母さんがスレイナイ君を付きっ切りで看病し、その間は自宅に残した7歳と4歳の妹の面倒を見られず、心配が尽きなかったそうですが、5日間の治療期間を経て無事回復し退院することができました。

コンパノンくん

年齢:生後2日
症状:心肺停止
家族構成:父、母

心肺停止の状態で生後2日のコンパノンくんが当院に緊急搬送されました。
当院に到着後すぐに救命処置(気道確保、胸骨圧迫、アドレナリン投与)を開始しました。
約10分後に心臓は自力で動き始めましたが、自力での呼吸は難しかったため、呼吸の補助をしながら、新生児の集中治療を行える国立小児病院へ無事に搬送することができました。

トランくん

年齢:13歳
病名:デング熱
家族構成:父、母、トランくん(長男)、ラマンニャちゃん(長女)、次女
トランくんと妹のラマンニャちゃん(次ページ参照)は、なんと兄弟でデング熱にかかってしまいました。2人の家族は当院からバイクで20分ほどの近所に住んでいたため、ジャパンハートの病院のことは知っていました。兄のトランくんは入院する前、4日間高熱が続いていましたが、入院中に点滴をうけながら、徐々に回復することができ、入院6日目に無事退院しました。

ラマンニャちゃん

年齢:11歳
病名:デング熱
家族構成:父、母、トランくん(長男)、ラマンニャちゃん(長女)、次女
トランくんの妹のラマンニャちゃんも、デング熱と診断され、入院しながら点滴による治療を受けました。兄同様デング熱により、症状が重症化する可能性があったため、入院し経過観察を受けました。
入院期間中に順調に回復し、数日後、無事に退院することができました。

今月の救われた命

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