一般財団法人 阿部 亮 財団

創設者で小児外科医の吉岡先生がカンボジア入りし、 2ヵ月ぶりに小児がん手術を実施しました。

ジャパンハートから活動報告が届きました

小児病棟オープンから2年が経過しました。

今月の活動トピック

6月に当院の小児病棟オープンから2年が経過しました。これまで、阿部亮財団の皆様に見守り、支えて頂きましたことを 心より御礼申し上げます。
創設者で小児外科医の吉岡がカンボジア入りし、2ヵ月ぶりに小児がん手術を実施しました。
6月は5名の患者さんが手術を受けることができました。
小児がんで入院し治療を受けていたビボルくん、パンニャサットくんが無事治療を終え、退院しました。(写真はパンニャサットくん)
新型コロナウイルス感染の影響でカンボジア国内の深刻な輸血不足の課題に貢献するため、当院で献血イベントを実施しました。
長期入院している小学生の年齢の子どもたちに、アプリを使った学習の機会を作りました。 今後も運用を工夫しながら継続していきます。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により休止していた母親学級を屋外で距離を保ちながら実施を再開しました。

今月の活動実績 まとめ

救われた命 累計156名 (6月単月 18名)

◼ 今月は小児がん患者さん5名を含む、計18名の小児患者さんの命を救うことができ、小児病棟オープン2年の目標である150名を達成することができました。

がん新規入院患者数 累計41名 (6月単月 5名)

◼ 国内の他の病院から紹介となり、神経芽腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫の患者さんが計5名新規入院しました。
◼ 小児がん病棟(全19床)が満床の状態が続いています。


外来診療数 296名

今月の外来診療患者数は計296名と、小児病棟をオープン以来過去最高の患者数でした。

要因は2つあると考えられ、
1) 現在のカンボジア国内の新型コロナウイルス感染者数は、海外からの入国者のみに限られており、国内での感染は報告されていません。そのためか、新型コロナウイルスに対する危機意識が国民の間で徐々に薄れ、4月以降受診を控えていた患者さんが増加したこと
予定手術のため再診した患者さんが多くいたことがあげられると考えています。

6月より長期ボランティアとして新生児科医が1名、当院の医療活動に参加しています。7月よりさらに小児科医1名が現地の活動に参加する予定で、カンボジア人医師たちを育成しながら小児部門をより一層強化していく予定です。


入院患者数 54名

◼ 6月の入院患者さんの内、鼠経ヘルニアや陰嚢水腫など、予定手術のため入院された患者さんが最も多くの割合を占めました。先月同様、膿瘍の患者さんも多く入院されました。
◼ 下の疾患内容内訳表にある、皮膚科系疾患のカテゴリーに含めている疾患は、皮下で形成された膿瘍を含む嚢胞、肉芽腫、脂肪腫です。 これらは患者さんの生活環境の衛生状態が良くないことが原因と言われています。

手術件数 38件

◼ 6月、弊団体最高顧問の吉岡がカンボジア入りし、2か月間ぶりに手術活動を再開しました。
◼ 小児がんの手術5件を含む、ヘルニアなどの小児外科疾患を38件実施しました。この間、病院に常駐するカンボジア人医師たちも学び、外科の技術を大きく伸ばしました。

キムホアちゃん

年齢:9か月
病名:神経芽腫疑い
神経の細胞にできるがんです。 小児期にできる腫瘍の中で白血病、脳腫瘍についで多い病気です。 特に、5歳以下の子どもの発症率が高いとされています。

当院に来院する1週間ほど前にキムホアちゃんのお腹に不自然なしこりがあることにお母さんが気づき、プノンペンの大きな病院を受診しました。すると、がんの疑いがあることが分かり、その病院では治療を行えないため、当院を紹介されました。入院して間もなく生検の手術を行いました。確定診断の後、抗がん剤治療を行う予定です。



ソリカーちゃん

年齢:1歳7か月
家族構成:祖父、祖母
病名:膀胱の横紋筋肉腫
横紋筋肉腫とは骨、筋肉や脂肪といった軟部組織にできる悪性腫瘍です。

ソリカーちゃんは、両親が都市部に出稼ぎに行っているため、農業に従事する祖父母と一緒に暮らしています。ある日、3日間血尿が続いたため、今年2月にシエムリアップ州の小児病院を受診し、生検の手術を受けました。 6月に横紋筋肉腫と診断されましたが、2つの病院から治療困難といわれ、当院に紹介されました。ソリカーちゃん家族の自宅は、当院から遠く、車で5時間かけて来てくれました。現在、抗がん剤治療を受けています。


ピセーくん

年齢:13歳
家族構成:父、母、妹
病名:首の平滑筋肉腫
平滑筋のがんで、幼児から成人まで幅広く発症します。

ピセーくんは首にしこりがあることに気づき、病院を受診したところ、結核と診断され、結核の治療薬を飲んでいました。しかし症状が改善されなかったため、プノンペン市内のチャリティ小児病院を受診し生検の手術を受けました。その結果、平滑筋肉腫と診断されました。その病院では、腫瘍の摘出の手術を行えず、プノンペンにある国立がんセンターのある大病院を受診するも、治療を断られてしまいました。そこで、当院を紹介され、今月入院し、手術を受けました。頸部に8つあった腫瘍を全て無事に摘出しました。摘出された腫瘍は日本で再検査し、今後の治療方針を決めていきます。


チャリーくん

年齢:4歳
家族構成:父、母、妹
病名:神経芽腫疑い
神経の細胞にできるがんです。 小児期にできる腫瘍の中で白血病、脳腫瘍についで多い病気です。 特に、5歳以下の子どもの発症率が高いとされています。

チャリーくんは夜に度々発熱し、食欲もなくなっていたので、お母さんが薬局で薬を買い、飲ませていました。しかし、症状は改善しませんでした。さらに数日後、チャリーくんのお腹の左側に固いしこりがあることに気づいたお母さんは大きなチャリティ小児病院に連れていきました。そこでCT検査の結果、神経芽腫の疑いがあることが判明し、しかも骨にまで転移していることが分かりました。その病院では、がん治療を行えないため、当院を紹介されました。 6月、生検のために頭のてっぺんの皮下に転移している腫瘍を一部とる手術を実施しました。確定診断の後、当院で抗がん剤治療を開始しました。


スレイミアちゃん

年齢:6歳
家族構成:祖父、祖母
病名:顔の横紋筋肉腫
横紋筋肉腫とは骨、筋肉や脂肪といった軟部組織にできる悪性腫瘍です。

スレイミアちゃんは顔の左側に横紋筋肉腫があります。3年前に父親をがんで亡くし、母親は海外へ出稼ぎに行っているため、祖父母と暮らしています。これまでシエムリアップ州の小児病院で腫瘍を摘出する手術を2回受けました。その後、別のシエムリアップ州内の病院で昨年末まで1年半にも及ぶ抗がん剤治療を受けました。抗がん剤治療を終えて2か月後の今年2月、再発し、再度、手術を受けました。これまで治療を受けていた病院ではこれ以上の治療が難しく、当院を紹介されました。スレイミアちゃん家族は、最後の望みをかけてバスで10時間かけて来院しました。現在当院で抗がん剤治療を受け、放射線治療を待っています。


ケラーちゃん

年齢:13歳
家族構成:父、母、6人兄弟の4番目
病名:蜂窩織炎(ほうかしきえん)
皮膚とそのすぐ下の組織に生じる、広がりやすい急性細菌感染症です。
患部の皮膚に発赤、痛み、圧痛がみられ、発熱や悪寒が生じたり、より重篤な症状が現れたりすることもある危険な感染症です。

ケラーちゃんは、当院を受診する前、右足の痛みを2週間も我慢していました。ある時から倦怠感と歩行困難になり、薬局で購入した薬で治そうとしましたが、結局よくならず、親戚に勧められて当院を受診することにしました。
蜂窩織炎と診断され、当院で1週間入院し抗生剤による治療を受け回復することができました。


ソファルくん

年齢:6歳
家族構成:父、母、妹
病名:腹膜炎、急性虫垂炎
腹膜とは、肝臓・胃・小腸・大腸といった腹部の臓器の外側と、内側の壁、横隔膜、骨盤底などを覆っている膜です。この腹膜に何らかの原因で炎症が生じることを腹膜炎といいます。

ソファルくんは、お腹の激痛を訴え、お母さんとともに来院しました。来院の2日前から、他の病院に入院しており、状態が変わらず腹痛も強くなっていましたが朝退院となりました。その日の夜にさらに痛みが強くなり来院した時には腹膜炎を起こしていました。すぐに緊急手術となりました。開腹すると、急性虫垂炎(盲腸)の悪化が原因の腹膜炎と判明し、命も危うい状態した。その後2週間ほど入院治療を行い順調に回復することができました。お母さんからは満面の笑みで「ありがとう」と言って下さいました。


ティアリくん

年齢:6歳
病名:左腕膿瘍
細菌感染によって皮膚の下に膿がたまる病気で、治療を行わなければ菌が全 身にまわる敗血症を起こし、命が脅かされる危険な状態になります。

ティアリくんは来院する1週間前に左腕が腫れ始め、痛みがありました。当院を受診した時には高熱があり、検査の結果膿瘍と診断されました。入院期間中、切開排膿し傷口のケアと抗生剤による治療を受けました。入院3日目にやっと熱が下がり、傷口の状態も改善し無事退院しました。


カニャーちゃん

年齢:9歳
家族構成:祖母、父、母、3人兄弟の末っ子
病名:急性糸球体腎炎
糸球体(小さな穴が多数あいた微細な血管でできた球状の腎組織で、それらの穴を通して血液がろ過されます)が侵される病気です。細菌感染後に血尿、蛋白尿、むくみ(浮腫)、高血圧等を呈する疾患です。

はじめは首と頭に膿瘍ができ、腫れと痛みを訴え当院を受診しました。6日間入院しながら傷口の洗浄と抗生剤の治療を受けました。傷口の状態が良くなったため一度退院しましたが、3日後、全身のむくみの症状が悪化していて息苦しさがあり、再入院しました。検査の結果、腎性貧血を起こしていることが分かり、高血圧もあり当院でさらに1週間余り治療を受けました。治療により順調に症状は改善を認めました。


チャンダーくん

年齢:12歳
家族構成:父、母、5人兄弟の4番目
病名:ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群とは、尿にタンパクがたくさん出てしまうために、血液中のタンパクが減り(低たんぱく血症)、その結果、むくみ(浮腫)が起こる疾患です。

来院する10日前から、全身がむくみ、体調を崩すようになりました。状態が一向に改善しないため、当院で治療を受けたことのある親戚からジャパンハートの病院の評判を聞き、自宅から2時間かけて来院しました。検査の結果、ネフローゼ症候群と診断され、入院となりました。治療により、むくみが取れ、血圧も正常となり徐々に回復することができました。


チャンモ二ロットちゃん

年齢:15歳
病名:左目下の膿瘍
細菌感染によって皮膚の下に膿がたまる病気で、治療を行わなければ菌が全身にまわる敗血症を起こし、命が脅かされる危険な状態になります。

来院する4日前から左目の下のあたりが腫れ始め、微熱がありました。薬局で買った薬で治そうとしましたが、それでもよくならず、当院を受診しました。 当院では切開排膿し、抗生剤の投与をしながら傷口の洗浄しました。数日間入院し、治療を受けたことで、傷口が改善し無事退院することができました。


その他の命を救われた患者さん

今月当院での治療により、命を救うことができた患者さんは前頁まででご紹介した他に7名いらっしゃいます。お名前、疾患名等は次の通りです。全員、無事に回復し退院することができました。

名前 年齢 性別 疾患名
1 キムスリエンくん 12 M デング熱
2 ラチャナーちゃん 13 F 熱性けいれん
3 ランちゃん 15 F 頬の膿瘍
4 ヤリちゃん 3 F 首の膿瘍
5 リダちゃん 1 F 頬の膿瘍
6 スレイソットちゃん 1 F 右大腿部の膿瘍
7 モロコットちゃん 1 F 右上腕部の膿瘍



今月の救われた命

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