一般財団法人 阿部 亮 財団

今月は8月末時点で25名小児がん患者さんが入院しています。増床・改装した小児がん病棟も満床に近いです。

ジャパンハートから活動報告が届きました

新型コロナウイルスの影響で休止していた農村部への出張診療活動を5カ月ぶりに再開し、150名以上の患者さんが受診しました。

今月の活動トピック

当院のリーダーとして勤務するアナティ―助産師が、より広範な視野で周産期医療を担えるよう、手術室に配属となりました。
ここで3か月間のトレーニングを受ける予定です。
今月は8月末時点で25名小児がん患者さんが入院しています。27床まで増床したばかりのがん病棟が早くも、いっぱいになり始めました。(写真は改装して新たに小児がん病棟として使用し始めた部屋の様子)
新型コロナウイルスの影響で休止していた農村部への出張診療活動を5カ月ぶりに再開し、150名以上の患者さんが受診しました。
患者さんの待ち時間の更なる短縮を目指し、現状把握のため、受付~医師の診察/診療終了までの待ち時間の計測を行いました。本結果をもとに具体策を挙げ、ひとつずつ実施していく予定です。
先月に引き続き今月もカンボジアのラジオニュースに当院の活動を取り上げて頂きました。(https://bit.ly/3l51M1D)
カンボジア政府は新型コロナウイルスの感染防止策として、本来4月にあるクメール正月の連休を延期していました。
それが、8月中旬に振り替えられることになり、今月はイレギュラーに祝日の多い月となりました。(8月17日~21日)

今月の活動実績 まとめ

救われた命 累計18名 (8月単月 18名)

◼ 今月は小児がん患者さん7名を含む、計18名の子どもたちの命を救うことができました。7月下旬から急増したデング熱の患者数は8月の前半で落ち着きました。
◼ 救われた患者さんについて6ページ以降で紹介しています。

がん新規入院患者数 累計7名 (8月単月 7名)

◼ 国内の大きな小児病院から紹介となり、肝芽腫、神経芽腫などの患者さんが計7名新規入院しました。
◼ 過去数か月間、新規入院患者数が大幅に伸び続けている理由の一つに、周辺国で医療を受ける代わりに当院で治療を受けることを選んだ患者さんが増加したからではないかと推察しています。新型コロナウイルスの影響により、国外の病院で治療を受けることが難しい状況になりました。そのため、当院により多くの小児がん患者さんが紹介されるようになったと推察しています。


外来診療数 240名

◼ 前月と比較し、8月は外来診療件数が減少しました。
最大の理由は本来4月にあるはずだったカンボジアで最大の正月連休が、8月に振り替えられ、外来診療の実施日が減少したことが挙げられます。

◼ また、例年と違い今年の8月は連休があったにもかかわらず、前年同月以上の診療件数となりました。その背景には、当院の口コミが徐々広がり続けていることのほか、海外への渡航が難しくなったことにより、タイやベトナムへ治療を受けに行けなくなった代わりに当院を選ぶ患者さんが増加したことが考えられます。


入院患者数 28名

◼ 8月の入院患者さんは、鼠経ヘルニアなどの予定手術のため入院された患者さんと、膿瘍などの皮膚の感染が悪化した症状で入院する患者さんなどが多くを占めました。
◼ 8月はカンボジア正月連休があったため、外来受診件数が減少したことや、手術を実施できる日数が減り、前月と比較し入院患者数が減少しました。

手術件数 13件

◼ 7月に引き続き、日本人ボランティア外科医と当院に勤務する医師とで小児がんの生検を含む様々な手術を実施することができました。 小児がんの生検は無事に5件実施することができ、次の治療に進めることができました。

メンキンくん

年齢:4歳
家族構成:父、母、3人兄弟
病名:ホジキンリンパ腫
  悪性リンパ腫の種類の1つです。

メンキンくんは、当院に来院する4か月前に首の右側に小指の先のサイズのしこりが出来始めました。不思議に思った父親が、地元の病院に連れて受診したところ、大きな病院の受診を勧められ、プノンペン市内の最大の小児病院を受診しました。そこで結核と診断され、4か月間、結核の治療を受けましたが、首の腫れは大きくなる一方でした。さらに詳しく検査を受けたところ、がんの疑いがあることが分かり、当院に紹介されました。当院では、生検を行い、診断の結果、ホジキンリンパ腫であることが判明しました。現在、抗がん剤治療を受けて腫瘍は小さくなってきています。
メンキン君は麺類の食べ物が大好きで、焼きそば麺の入ったスープを好んでよく食べるそうです。つい食べ過ぎてしまうので、食べるときはお父さんがいつも食べ過ぎないよう監視しているそうです。



ワンレックくん

年齢:12歳
家族構成:父、母、年上の兄弟2人
病名:小腸腫瘍
当院へ入院する2-3か月前から腹部が腫れ始めました。地元の小さな病院で処方された薬を飲んでいましたが、よくならず、半月前にプノンペン市内の小児病院を受診したところ、がんの疑いがあることが分かり、当院を紹介されました。現在は腫瘍のために腹痛の症状があります。当院では生検の手術を行い、稀なタイプの小腸腫瘍と診断されました。幸い転移はないため、手術で全摘する予定です。

将来何になりたいかと聞くと、これまで軍隊に入りたいと考えていたそうですが、この病気の症状に苦しい思いをした2-3か月で、考えが変わったそうです。今は自分と同じように苦しい想いをする他の子どもたちを治せる医者になりたいと思っていると話してくれました。
新型コロナウイルスの影響で閉鎖されていた小学校が今年の11月以降に再開を予定しているそうで、小学校に早く通いたいそうです。


ソピアくん

年齢:2歳
家族構成:祖父、祖母、父、母、兄
病名:肝芽腫
肝臓にできるがんです。 治療では、手術、化学療法、ときには放射線療法が行われます。

ソピアくんは両親が共働きのため(お母さんは工場勤務、お父さんは大型トラックの運転手)普段はおばあちゃんが面倒を見ています。今年7月下旬のある日、ソピアくんが座っていると、「お腹が痛い」と言い出しました。おばあちゃんがお腹に触ってみると固いものがあることに気づきました。近所のクリニックでエコー検査をしてもらったところ、腹部にかたまりがあるとのことで、プノンペン市内の大きな小児病院を紹介されました。そこでがんの疑いがあることが分かり、当院に紹介されました。
当院では生検の手術を行いました。抗がん剤治療で腫瘍を小さくし、手術を行う予定です。


アナーちゃん

年齢:4か月
家族構成:父、母、祖母、兄2人
病名:悪性腫瘍疑い(右副腎の腫瘍)

アナ―ちゃんの家族は、タイと国境を接し輸出入が盛んに行われているポイペトという地区で暮らしています。当院に来院する2週間前のある日、母親が下痢と嘔吐をしていたアナ―ちゃんのお腹をさすりました。すると不自然な固いしこりがあることに気づき、近所の病院に連れて行きました。そこでシエムリアップ州の大きな小児病院を紹介され、検査を受けた結果、がんの疑いがあることが判明しました。その病院に入院中に知り合った、他の小児がん患者さんの母親に、当院で無料で治療を受けられることを聞き、自宅から7時間以上かけて、来てくれました。
遠く離れた実家ではアナ―ちゃんの兄二人とその兄弟の面倒を見ていた祖母が3人ともデング熱にかかってしまったそうです。病気の家族を残した状態で当院にアナ―ちゃんを連れて来てくれた母親は、家族のことが心配でたまらないと話していました。


ソリャカンくん

年齢:7か月
家族構成:祖父、父、母、叔父、兄二人
病名:肝芽腫(疑い)
肝臓にできるがんです。 治療では、手術、化学療法、ときには放射線療法が行われます。

生後5か月の頃、ソリャカンくんが下痢を繰り返していたため、母親が、近所の病院を受診しました。そこでエコー検査を受けたところ、腹部に塊があることが分かり、プノンペンの大きな小児病院に紹介されました。そこで検査を受けたところ、がんの疑いがあることがわかり、小児がん治療を行っている当院を紹介されました。
当院では抗がん剤治療で腫瘍を小さくした後、手術を行う予定です。ソリャカンくんは、現在、元気よく母乳を飲みながら、治療を頑張っています。


センアーちゃん

年齢:2歳
家族構成:祖母、父、母
病名:神経芽腫
神経の細胞にできるがんです。 小児期にできる腫瘍の中で白血病、脳腫瘍についで多い病気です。 特に、5歳以下の子どもの発症率が高いとされています。

センアーちゃんの両親は共働きのため、普段はおばあちゃんが面倒を見てくれています。ある時からセンアーちゃんの目の周りが黒ずみはじめ、頭に不自然なしこりが出てきたことにより、おばあちゃんはセンアーちゃんの身体に異変が起きていることに気付きました。病院に連れて行ったところ、がんの疑いがあることが分かり、がんの治療を無料で行う当院に紹介されました。当院では抗がん剤治療を行う予定です。

センアーちゃんはお菓子が大好きだそうで、いつも食事よりもお菓子を優先して食べお腹を満たす傾向があるそうです。当院では毎日の給食提供を通して、栄養のある食事摂取でしっかり治療を支えていけるよう指導する予定です。


サチャックくん

年齢:2か月
家族構成:父、母、祖母、兄1人
病名:肝芽腫(疑い)
肝臓にできるがんです。 治療では、手術、化学療法、ときには放射線療法が行われます。

サチャックくんは生後間もない男の子です。ある時お母さんがサチャックくんのお腹を触ったところ、不自然な固いしこりがあることに気づき、プノンペンにある小児病院を受診しました。そこでがんの疑いがあることが判明し、当院を紹介されました。当院では抗がん剤治療で腫瘍を小さくして摘出の手術を行う予定です。サチャックくんの闘病期間中は、母親は小売店での仕事、父親はサチャックくんの入院に付き添いながらオンラインで仕事をする予定だそうです。


カチャナーちゃん

年齢:6歳
家族構成:父、母、2人兄弟
病名:菌血症
本来無菌であるはずの血液中に細菌が認められる状態を指し、血流感染(英: blood stream infection; BSI)とも呼ばれる。

カチャナ―ちゃんは小学2年生で、本などを静かに読むのが好きな、おとなしい性格の女の子です。カチャナ―ちゃんは8月初めに自宅で連日高熱と筋肉痛、寒気が続き、はじめは自宅近くのクリニックに行き入院しました。しかし、症状が変わらなかったため、さらに当院の連携している公立病院を受診し数日入院しました。それでも症状が改善しなかったため、当院を紹介され8月初めに入院しました。当院では、血液の中に菌が検出されたため、3週間以上の間、点滴による治療を行いました。やっと症状が落ち着いたため、無事に退院することができました。


リーサーちゃん

年齢:10か月
家族構成:祖父、祖母、父、母
病名:熱傷・熱性けいれん

リーサーちゃん家族は、病院の近所に住んでいます。母親は出産前に当院の妊婦検診に通っていたため、ジャパンハートのことをよく知っていたそうです。
普段は両親ともに工場勤務のため、おばあさんが面倒を見ています。
ある日、おばあちゃんが沸かしていたお湯がリーサーちゃんの左太もも広範にかかり、やけどを負ってしまいました。
すぐに病院に行かず、まず伝統療法で歯磨き粉を患部に塗るなどの処置を自宅で行いました。しばらく経つうちに、火傷した場所から感染を起こし、熱発してしまいました。さらにその熱により、けいれんし始めたため、両親は急いで当院にリーサーちゃんを連れてきてくれました。当院では、けいれんが止まった後に傷口をきれいに洗浄し、入院期間中は傷口の洗浄と抗生剤の治療を行いました。その後、熱も下がり、患部の状態もよくなり、無事退院することができました。


ソバンナリーくん

年齢:10歳
家族構成:父、母、兄
病名:口内の腫瘍
細菌感染によって皮膚の下に膿がたまる病気で、治療を行わなければ菌が全 身にまわる敗血症を起こし、命が脅かされる危険な状態になります。

ソバンナリーくんは算数が得意な小学2年生で、当院の近所に住んでいます。
来院する1週間前から歯茎のあたりから痛み始め、頬の腫れが大きくなっていきました。痛みが酷くなったため、以前から知っていた当院を受診しました。診察の結果、痛みと腫れの原因が歯茎にできた膿瘍であることが分かり、頬から切開し排膿しました。その後1週間入院しながら、傷口の洗浄と抗生剤による治療を受け、無事に退院することができました。


スレイミアちゃん②

年齢:6歳
病名:顔の横紋筋肉腫
横紋筋肉腫とは骨、筋肉や脂肪といった軟部組織にできる悪性腫瘍です。
家族構成:祖父、祖母

スレイミアちゃんは、2020年6月から当院で治療を受けています。シエムリアップ州にある小児病院で抗がん剤治療を受けていましたが、今年2月に再発し、再度、累計4回目となる手術を受けました。これまで治療を受けていた病院ではこれ以上の治療が難しく、当院を紹介されました。スレイミアちゃん家族は、最後の望みをかけてバスで10時間かけて来院してくれ、現在放射線治療を頑張っています。
病院では誰よりもアクティブに遊び、給食センターの食事をよく食べるスレイミアちゃん。同じ病棟の年齢の近いお友達と一緒に遊んでいるときの、無邪気な笑い声がよくナースステーションまで響いています。


その他の命を救われた患者さん

今月当院での治療により、命を救うことができた患者さんは前頁まででご紹介した他に8名いらっしゃいます。お名前、疾患名等は次の通りです。全員、無事に回復し退院することができました。

名前 年齢 性別 疾患名
1 ビサルくん 1 M 喘息
2 モネアちゃん 12 F デング熱
3 シアベンちゃん 1ヵ月 F 敗血症
4 カニカちゃん 5ヵ月 F 膿瘍
5 ビチャラくん 2 M 下唇の膿瘍
6 ナラットくん 13 M かかとの膿瘍
7 ビラックくん 6 M 首の膿瘍
8 チャンモ二カちゃん 1ヵ月 F 大腿部の膿瘍



今月の救われた命

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