最高顧問吉岡と小児外科医がカンボジアに入国し、10名以上の小児がん患者さんへ手術を実施しました。
ジャパンハートから活動報告が届きました
最高顧問吉岡と小児外科医がカンボジアに入国し、10名以上の小児がん患者さんへ手術を実施しました
今月の活動トピック
今月の活動実績 まとめ
救われた命 累計45名 (10月単月 15名)
◼ 今月は小児がん患者さん10名を含む、計15名の子どもたちの命を救うことができました。◼ 救われた小児がん患者さんについて6ページ以降で紹介しています。
がん新規入院患者数 累計25名 (10月単月 10名)
◼ 国内にあるいくつかの大きな小児病院からの紹介や口コミで患者さんが多く来院し、1ヵ月間で10名と過去最高の小児がんの新規入院患者数を記録しました。◼ これまで稀だった海と面する州やタイやラオス、ベトナムの国境近くに住む患者さんも多く来院しました。
外来診療数 192名
◼ 10月の外来診療数は192名と、過去数か月と比較し、診療数が減少しました。
その理由には、①台風の影響と②水祭りの連休の2つが考えられます。
①10月中旬は大きな台風が東南アジアに上陸した
ことで、カンボジア国内の多くの州で洪水が起き、全国で25名の死者が出るなど深刻な被害がありました。今年ほど大規模な洪水は10年ぶりと言われていて、全国で20万人以上が被災したとのことです。
当時、当院から車で1時間程走った先で浸水して通行が困難になっている地域もあり、各地で交通が妨げられたことが、患者数の減少理由の一つと考えられます。
②台風の被害があった翌週からカンボジアの水祭りの連休(10月29日~11月1日)に入りました。
水祭り連休期間は外来診療が休みとなり、診療日数が昨年より少なかったことも、今月の患者数の減少の一因に挙げられます。
(昨年の水祭り期間は11月10日~12日)
入院患者数 28名
◼ 10月は他院からたくさんの小児がん患者さんが紹介され、入院となったことに加え、陰嚢水腫や鼠径ヘルニアなど、予定手術のため入院した患者さんが入院者数全体の半数以上を占めました。
◼ 昨年の10月は予定手術の他、デング熱や膿瘍の患者さんが多く来院しましたが、今年の10月はデング熱、疾患の患者さんはそれほど多く受診されませんでした。
手術件数 26件
◼ 10月は、小児がん患者さんに手術を実施するために来院した日本人の小児外科医と最高顧問吉岡による手術を実施しました。◼ 小児がん患者さんの腫瘍の全摘のために、1件
当たり4時間から最長で12時間以上かかる大手術を多く行いました。
セッターくん
年齢:6か月家族構成:父、母、兄
病名:ウィルムス腫瘍疑い
腎臓にできるがんです。たいていの場合、小児の腹部にしこりができ、腹痛、発熱、食欲不振、吐き気、
嘔吐もみられます。
治療では、手術、化学療法、ときには放射線療法が行われます。
セッタ―くんのがんは、当院に来院する2か月前に、
国内の別の大きな小児病院で判明しました。しかし、そこでは到底支払うことのできない、高額な治療費がかかることから、治療を諦め、自宅に帰っていたそうです。
ある日、地元の隣人から、ジャパンハートの病院で
小児がん治療を行っていることを聞き、タイとの国境が近い地域にある自宅からはるばる来院してくださいました。
当時、カンボジアの約半分の州で台風の影響により、深刻な洪水災害が起きてました。患者さんは被害の起きている地域をまたいで、悪路の中を、通常の2倍の12時間かけて来てくださったそうです。吉岡の滞在期間中に来院できたので、すぐに腫瘍を摘出する手術を行うことができました。今後、生検の結果、確定診断を行ったのち、治療を開始する予定です。
ウィッチャくん
年齢:4歳家族構成:父、母、兄
病名:ウィルムス腫瘍
腎臓にできるがんです。たいていの場合、小児の腹部にしこりができ、腹痛、発熱、食欲不振、吐き気、
嘔吐もみられます。
治療では、手術、化学療法、ときには放射線療法が行われます。
ウィッチャくん家族は当院から4時間ほど離れた地域に住んでいて、稲作を生業としています。家族がウィッチャくんの身体の異変に気づいたのは8か月前でした。プノンペン市内の最大の小児病院を受診し、その後
国立の小児病院に紹介となり、そこで腫瘍を摘出する
手術を受けました。手術中に腫瘍が破裂してしまい、
体内にがん細胞が残ってしまいました。その後必要な抗がん剤治療を行うため、国立がんセンターに紹介され、1週間で3万円近くする抗がん剤治療を4週間受け、治療を終えていました。
しかし、当院に来院する10日前に再発していることが判明しました。高額な治療費を支払って通った国立がんセンターで再度、抗がん剤治療を受ける必要があると言われました。経済的に治療を続けることが難しく、困っていたところ、最終的に当院を紹介され、
来院しました。
当院でこれから治療を開始する予定です。
シナちゃん
年齢:10歳家族構成:父、母、弟
病名:肝臓のがん
シナちゃんは絵を描くことが大好きな小学校3年生です。
家族はベトナムと国境を接する州に住んでいて、母親はその地域にある工場に勤務しています。9月中旬ごろから腹痛が続いたため、近所の病院を受診した
ところ、腹部に塊が見つかり、悪性の可能性があることが分かりました。そこでプノンペン市内にあるチャリティの小児病院の受診を勧められ、入院しましたが点滴のみの治療を受けるだけで2週間以上経過し、症状が一向に改善しなかったため、お母さんは別の国立の小児病院を受診させました。そこでの検査の結果、がんの疑いがあることが分かり、小児がんの治療を行っている当院を紹介されました。
当院では生検の手術を行いました。
確定診断の後、治療を行う予定です。
リナーちゃん
年齢:3歳家族構成:父、母、姉2人
病名:左目のリンパ腫
リンパ腫とは血液がんの1つで、白血球の中のリンパ球ががん化したものです。リンパ系の組織や臓器は全身にあるため、リンパ腫は全身の部位で発生する可能性があります。
リナーちゃんの家族は当院から車で6時間離れたシエムリアップ州に住んでいます。
ある日リナーちゃんの左目が腫れ、咳や嘔吐も続いたため、小児病院を受診しました。
そこで目の専門家のいる別の小児病院を紹介され、
その病院で生検の手術を受けました。確定診断の結果、悪性のリンパ腫であることが分かり、同じ病院で抗がん剤治療を受けました。ところが、治療による効果は見られなかったため、当院に紹介となりました。当院では抗がん剤治療を開始しています。
ここで治療を受けられることになり、お母さんは、とても心が温かい気持ちになったと話してくれました。
リナーちゃんには二人のお姉さんがいます。お家ではよく、お姉さんの真似をして、文字や絵を描くことをよく楽しんでいるそうです。お姉さん二人は遠く離れた実家からリナーちゃんの帰りを待っているそうです。
ウサーくん
年齢:1歳家族構成:父、母、父の兄弟夫婦2組、
病名:腹部の悪性腫瘍疑い
ウサーくんは、プノンペン市内にある国内最大の小児病院を受診したところ、がんの疑いがあることが分かり、当院を紹介されました。
お母さんはがんの疑いがあることを知った時から驚いて毎日悲しくて泣いていたそうです。しかし当院に来てから、同じ疾患を持つ患者さんの母親に たくさん出会い、少し気持ちが楽になったと話していました。
当院ではウサーくんに生検の手術を行いました。確定診断の後、治療を行う予定です。
ソーピソくん
年齢:1歳家族構成:父、母
病名:腹部の悪性腫瘍
ソーピソくんの家族はシエムリアップ州に住んでいます。
当院に来院する約10日前に父親がソーピソくんの後姿を見て、左腹部が不自然に出っ張っていることに気付きました。地元の小児病院を受診しましたが、そこでは治療できないため、同州内の別の小児病院を紹介されました。
しかし、そこでもがんの治療をすることが難しいことがわかり、最終的に当院を紹介されました。当院では生検の手術を行いました。確定診断の後、治療を行う予定です。
パッタイくん
年齢:6歳家族構成:父、母、4人兄弟の末っ子
病名:縦郭のリンパ腫
リンパ腫とは血液がんの1つで、白血球の中のリンパ球ががん化したものです。リンパ系の組織や臓器は全身にあるため、リンパ腫は全身の部位で発生する可能性があります。
パッタイくんは、9月に息苦しさと、胸の痛み、咳が
5日間続いたため、プノンペン最大の小児病院を受診しました。その病院での検査の結果、 腹部に腫瘍があることが分かり、がんを無料で治療できる当院を紹介されました。
入院当初は、胸の中にある大きな腫瘍のために、呼吸が苦しく、しゃべることすら難しい状態でした。
パッタイくんは強い抗がん剤の副作用にも耐え、徐々に状態がよくなっています。入院当初、咳込み続けていたところから、症状が良くなったことで気分も明るくなり、病棟では大きな声を出すなど、本来のやんちゃぶりを発揮できるようになりました。
トラーくん
年齢:11か月家族構成:父、母、兄、
病名:神経芽腫
神経の細胞にできるがんです。 小児期にできる腫瘍の中で白血病、脳腫瘍についで多い病気です。特に、5歳以下の子どもの発症率が高いとされています。
1ヵ月前からトラ―くんの頭が腫れ、それが徐々に大きくなり、顔色も悪くなったため、シエムリアップ州にある小児病院を受診しました。当時は、薬だけ処方され返されていました。しかし、症状が改善しなかったため、今月に入り、もう一度受診したところ、がんの疑いがあることが分かりました。その病院では治療できないがんのタイプだったため、当院を紹介され来院しました。10月中旬に生検の手術を行い、抗がん剤
治療を開始しています。
ナンくん
年齢:1歳 家族構成:父、母、兄、病名:ウィルムス腫瘍疑い
腎臓にできるがんです。たいていの場合、小児の腹部にしこりができ、腹痛、発熱、食欲不振、吐き気、嘔吐もみられます。 治療では、手術、化学療法、ときには放射線療法が行われます。
ナンくんの家族は、8月にプノンペン市内にある国立の小児病院を受診し、腎臓に腫瘍があることが分かりました。その病院で3週間、抗がん剤治療を受けましたが、治療の効果が認められなかったため、当院に今月下旬に紹介されました。当院ではまず腫瘍の全摘手術を行い、小さな体から1㎏の腫瘍を腎臓ごと摘出しました。今後、確定診断の後、治療を行う予定です。
ロティヤーちゃん
年齢:6歳家族構成:父、母、3歳の妹
病名:後腹膜腫瘍
ロティヤーちゃんは、小学1年生の女の子です。当院から車で6時間ほど離れた州に住んでいます。今年、小学校に通い始めて1週間たった時に、腹部に塊があることに家族が気付き病院を受診しました。以来、学校に
戻れていないそうです。シエムリアップ州にある小児病院に入院し、生検の手術を受けました。
10月中旬に、2回目の手術で腫瘍を全摘する手術を受けましたが、術中に大量出血してしまい、結局、腫瘍をとり切れないままになっているそうです。今月、当院に紹介され、吉岡によってお腹の腫瘍を全摘しました。病理検査の結果を待って治療を始める予定です。
スレイレンちゃん 途中経過
年齢:1歳7か月家族構成:父、母、6人兄弟の末っ子
病名:腎芽腫
腎臓にできるがんです。たいていの場合、小児の腹部にしこりができ、腹痛、発熱、食欲不振、吐き気、
嘔吐もみられます。 治療では、手術、化学療法、ときには放射線療法が行われます。
9月に入院していたスレイレンちゃんは、10月に最高顧問・吉岡と日本人小児外科ボランティア医師により腫瘍を全摘する手術を受けました。手術は無事に終了し、その後元気に回復しています。
摘出した腫瘍の生検の結果が届き、その結果からこれから8か月間、抗がん剤治療を受ける必要があることが分かりました。
お母さんは娘の治療に付き添うため、仕事を辞めており、家計の収入が半減している状態です。スレイレンちゃんは6人兄弟の末っ子で、お父さんは地元で働きながら5人の子どもを養っていく必要があります。
スレイレンちゃんのように、長期に及ぶ治療は、お金が続かず治療を脱落する家庭が少なくありません。
ジャパンハートは、スレイレンちゃんが、しっかり
最後まで治療を完遂できるよう、従来通り無償の医療提供に加え、家庭への支援も行いながら寄り添っていく予定です。
その他の命を救われた患者さん
今月当院での治療により、命を救うことができた患者さんは前頁まででご紹介した他に8名いらっしゃいます。お名前、疾患名等は次の通りです。全員、無事に回復し退院することができました。
名前 | 年齢 | 性別 | 疾患名 | |
---|---|---|---|---|
1 | メイレンちゃん | 7 | F | 肩の刺傷 |
2 | チェスダくん | 5 | M | 停留精巣 |
3 | コカくん | 10ヵ月 | M | 細気管支炎 |
4 | レアクサくん | 8 | M | 火傷 |
5 | セレイソットくん | 1ヵ月 | M | 蜂窩織炎 |