一般財団法人 阿部 亮 財団

小児がんの入院患者数が過去最多となりました。

ジャパンハートから活動報告が届きました

小児がんの入院患者数が過去最多となりました。

今月の活動トピック

日本から2か月ぶりに最高顧問吉岡が14日間の
隔離期間を経て、カンボジアの病院に到着しました。
多くの小児がん患者さんが手術を受けることができました。
8歳の神経芽腫で入院していた患者さんが、治療を終え退院しました。入院時は座ることすらままならないほど衰弱していましたが、この日、自分の足で元気に帰ることができました。
長期ボランティアとして日本から産婦人科医が
現地入りし、婦人科系疾患の手術や地域のヘルスセンター対象に分娩時の赤ちゃんにかかるストレスについてレクチャーを行いました。
1ヵ月の間に11名の小児がん患者さんが新規入院し、小児がんの入院患者数が過去最多となりました。
手術ミッションを控え、輸血を大量に必要とする時期を前に、輸血センターと一緒に献血キャンペーンを
実施しました。
51名が献血に協力してくださいました。
乳幼児健診を実施し、産後当院でケアを受けた母子が久しぶりに来院してくれました。小児科医が子供たちの成長と発達を確認しました。

今月の活動実績 まとめ

救われた命 累計81名 
(1月単月 17名)

◼ 今月は小児がん患者さん11名を含む、計17名もの子どもたちの命を救うことができました。
◼ 救われた小児患者さんについて6ページ以降で紹介しています。


がん新規入院患者数 累計47名 
(1月単月 11名)

◼ 12月の小児がん患者さんの新規入院者数は11名に上り、先月に引き続き多くの患者さんが当院での治療を求め、来院しました。
◼ 過去半年間で前年実績の2倍のペースで小児がん患者さんが来院しています。


外来診療数 241名

◼ 1月の外来診療数は241名と、前月の診療者数とほぼ同水準でした。また、前年同月の実績からは若干減少していました。前月同様、1月も高い受診者数を保っている理由は、乾期に入り、一年で最も涼しく過ごしやすい時期で病院に外出しやすい環境となったことが考えられます。


入院患者数 25名

◼ 1月も夏から引き続き横ばいの入院患者数となりました。
◼ 入院患者のうち、4割以上が新規の小児がんの入院患者さんでした。
◼ 小児科の一般病棟は治療前の検査を受けるため入院している小児がん患者さんで埋まってしまう状態に何度もなりました。がん患者さんの入院期間は長く、患者数は横ばいですが、病床の稼働率は高い状態が続いていました。

手術件数  27件

◼ 1月は最高顧問吉岡が現地入りし、小児がんを中心に多くの手術を実施しました。
滞在期間に新たに入院した小児がん患児へ生検の手術を実施したり、抗がん剤治療を受け、手術を待っていた患者さんへ腫瘍摘出する大きな手術を実施しました。
◼ 小児がん手術以外には、鼠経ヘルニアなどの予定手術を10件以上実施しました。

ダーラッくん

年齢:1歳
家族構成:父、母、兄
病名:神経芽腫の疑い
神経の細胞にできるがんです。
小児期にできる腫瘍の中で白血病、脳腫瘍についで多い病気です。特に、5歳以下の子どもの発症率が高いとされています。

ダーラッくんは、動物が好きで特に牛が大好きな男の子です。
当院に来院する5か月ほど前、両親はダーラッくんのお腹が腫れ始めていることに気が付きました。下痢と便秘を繰り返す症状もありました。たくさんの病院を転々としましたが、原因が分からないまま4か月が過ぎました。今年1月にシエムリアップ州の小児病院を受診し検査を受けたところ、はじめてがんの疑いがあることが分かりました。
がんの治療を行える当院を紹介され、入院後生検の手術を受けました。確定診断の後、抗がん剤治療を行う予定です。

母親は、当院の医師と看護師がよく患者の立場に立って心を理解してくれる上に、息子のことをよく見てくれて嬉しいと話してくれました。



リーホウくん

年齢:5歳
家族構成:父、母、2人兄弟
病名:腹部の横紋筋肉腫
横紋筋肉腫とは骨、筋肉や脂肪といった軟部組織にできる悪性腫瘍です。

リーファくんは当院から車で4時間ほど離れた地域からやってきました。
小学校に入学して数か月間たった頃の昨年の11月、
リーファくんのお腹が腫れ始め、時々発熱するようになりました。近所のクリニックでエコー検査をしてもらったところ、腫瘍があることがわかり、国内最大の
小児病院を紹介されました。その病院で検査を受けたところ、がんの疑いがあることが分かりましたが、そこでは腫瘍が大きすぎて生検ができないと判断され、シエムリアップ州のチャリテイー病院に紹介されました。そこでも治療を行えないと言われ、最後に当院を紹介されました。
当院を始めて受診した日のおよそ一週間後に、日本から渡航し14日間の隔離を終えたばかりの吉岡医師により生検の手術を受けました。横紋筋肉腫と診断され、当院で抗がん剤治療を開始しています。


ピセイちゃん

年齢:11歳
家族構成:父、母、3人兄弟の長女
病名:縦隔のリンパ腫疑い
リンパ腫とは血液がんの1つで、白血球の中のリンパ球ががん化したものです。リンパ系の組織や臓器は全身にあるため、リンパ腫は全身の部位で発生する可能性があります。

ピセイちゃんは、ポーサット州という当院から5時間離れた地域出身の小学5年生の女の子です。ある時から呼吸が苦しくなり始め、熱もあったのでカンボジア国内最大の小児病院に行きました。そこで縦隔に腫瘍があることが分かり、当院を紹介されました。当院に到着した頃には、腹部全体が腫れ、前傾姿勢で座っていないと呼吸が苦しく、寝るときは右側を横にした姿勢でないと息が苦しくて眠れないという状況でした。
生検を行える状態ではなく、すぐに抗がん剤治療を始める必要があったため、入院してすぐ治療を開始しました。治療開始から1っ週間が過ぎた頃、むくみが引き、歩けるようになるまでになりました。


レッカナーちゃん

年齢:生後7か月
家族構成:父、母
病名:神経芽腫疑い
神経の細胞にできるがんです。
小児期にできる腫瘍の中で白血病、脳腫瘍についで
多い病気です。特に、5歳以下の子どもの発症率が高いとされています。

レッカナーちゃんとそのご両親は、タイと国境を接する州からシェアタクシーを3回乗り継ぎ11時間かけて当院まで来てくれました。
昨年12月にレッカナーちゃんの腹部と首に
しこりがあり、目元が内出血し黒くなり始めたため、両親は国内最大の小児病院を受診させました。そこでCT検査の結果、神経芽腫が疑われ、当院を紹介されました。当院では抗がん剤治療を開始し、現在は入院当初よりも目元の腫れが引いてきています。


サオペンくん

年齢:15歳
家族構成:父、母、妹
病名:縦隔の胚細胞腫瘍
赤ちゃんの時期(胎生期)に色々な内臓に分化する
能力を持った原始胚細胞という細胞が、悪性腫瘍になったものと考えられています。好発年齢は10歳代から30歳代です。

サオペンくんは、身長が既に175cmまで伸び、バレーボールが得意な中学1年生です。当院から車で5時間ほど離れた地域に住み、両親は木からゴムを採取する仕事に従事されています。
ある時、2週間も胸の痛みが続いたため近所のクリニックを受診し入院しました。しかし、そこでは症状が改善しなかったためプノンペン市内にある国内最大の小児病院を受診しました。
そこで、MRIやCT検査を受けたところ胸部にがんがあることが判明し、当院を紹介されました。入院した当時は息苦しそうに呼吸をしていました。
当院では生検を行い、確定診断の後、抗がん剤治療を開始しています。治療開始後胸の痛みは改善してきているそうです。


マティンちゃん

年齢:2歳
家族構成:父、母、弟
病名:首の腫瘍

マティンちゃんは当院の位置する州と隣接する州に
家族4人で暮らしています。
4か月前より首に腫瘍ができはじめ、その腫瘍が徐々に大きくなり始めたため、国内最大の小児病院を受診しました。その病院で生検を2回実施しはっきりとした診断がつきませんでしたが、がんの疑いがあることが分かり、更なる治療を受けるため当院を紹介されました。当院でも改めて生検を行いました。
今後、抗がん剤治療を行う予定です。
マティンちゃんはきのこの入った料理が大好きだそうですが、今は首のあたりにある腫瘍のせいで、うまくかんで飲み込むことが難しいそうです。


チャンディくん

年齢:6歳
家族構成:父、母
病名:悪性腫瘍疑い

チャンディくんはある時から腹部が腫れ始め、そのことに気付いた母親が、国内最大の小児病院に連れて行きました。
そこで検査を受けた結果、首と腹部に腫瘍があることが分かり、がんであることが疑われました。国内にある、国立がんセンターなどを勧められましたが、当院で治療を受けたことのある近所の方に当院で治療を受けることを勧められ、来院しました。
当院では生検の手術を行いました。
確定診断の後、抗がん剤治療を行う予定です。

スレイピッチちゃん

年齢:4歳
家族構成:父、母、二人姉妹
病名:神経芽腫疑い
神経の細胞にできるがんです。 小児期にできる腫瘍の中で白血病、脳腫瘍についで多い病気です。
特に、5歳以下の子どもの発症率が高いとされています。

スレイピッチちゃんはプノンペンの郊外の州出身の女の子です。両親は米と野菜を育て生計を立てています。ある時、スレイピッチちゃんが腹部の強い痛みを訴え関節痛を伴う40度以上の高熱を出したためプノンペン市内にある国立小児病院を受診しました。そこで、腹部に腫瘍があることが分かり、さらに検査が必要だったため、国内最大のチャリティ小児病院を紹介されました。そこでのCTなどの検査の結果、がんの疑いがあることが分かり当院に紹介されました。入院して間もなく、ちょうど滞在していた吉岡と現地の医師たちで生検の手術を行いました。
当院では確定診断の後抗がん剤治療を開始する予定です。


ニタちゃん

年齢:1歳7か月
家族構成:父、母、兄
病名:仙尾部奇形腫
仙骨の先端より発生した腫瘍。

ニタちゃんは当院から3時間離れた地域に両親と兄と
暮らしています。来院する3~4か月前から便が出にくくなり始め、それが3か月も続いたため母親が、
国内最大の小児病院に連れて行きました。検査の結果、お尻に腫瘍があることが分かりました。そこで、腫瘍を摘出し、その腫瘍を検査をしたところ、悪性であることがわかり、抗がん剤治療を無償で行う当院を紹介されました。当院では1月から抗がん剤治療を開始しており、腫瘍を小さくした後手術で全摘する予定です。


ヴァリ―くん

年齢:生後9か月
家族構成:父、母
病名:肝芽腫の疑い
肝臓にできるがんです。 治療では、手術、化学療法、ときには放射線療法が行われます。

ヴァリーくんは、生まれた直後から腹部にしこりの
ようなものがあり、痛みはないもののそれが徐々に大きくなっていました。
国内最大の小児病院を受診しMRIやCT検査を受けたところ、がんの疑いがあることが分かり、当院を紹介されました。
そこで、自宅から車で5時間かけて来院しました。入院当時、小さい体ですが既にお腹が腫瘍でパンパンに
腫れている状態でした。入院して間もなく生検の手術を受けました。すでに抗がん剤治療を開始しています。


カニャーちゃん(途中経過)

年齢:10か月
家族構成:父、母、3人兄弟の3人目
病名:肝芽腫
肝臓にできるがんです。治療では、手術、化学療法、ときには放射線療法が行われます。

先月当院を紹介されて来院したカニャーちゃんは、
入院後抗がん剤治療を受けていました。そして1月に来院した吉岡医師と当院の医師、日本人のボランティア外科医によって腫瘍を摘出する手術を受けました。
1月の吉岡医師の滞在期間中で最も難しい手術でしたが、無事に実施することができました。
手術直後、たくさんの管がつながれていましたが、ご両親と多くの医療スタッフに見守られながら順調に回復し、手術から5日後やっとすべての管が外れ、ICUから出ることができました。
手術後も抗がん剤治療を1ヵ月間続ける予定です。


ボーモーくん

年齢:生後2か月
家族構成:父、母
病名:肝芽腫疑い
肝臓にできるがんです。 治療では、手術、化学療法、ときには放射線療法が行われます。

生まれつき、舌が大きく、腹部が腫れている状態でした。それ以外の症状は特になかったのですが、2か月弱経過したある日、苦しそうに呼吸をするようになり、腹部も更に膨れてきてしまったため、母親が国内最大の小児病院に連れていきました。そこで肝臓のがんの疑いがあることが分かり、当院をすぐに紹介されました。当院では生検の手術を行い、確定診断の後、抗がん剤治療を開始する予定です。


その他の命を救われた患者さん

今月当院での治療により、命を救うことができた患者さんは前頁まででご紹介した他に8名いらっしゃいます。お名前、疾患名等は次の通りです。
全員、無事に回復し退院することができました。

名前 年齢 性別 疾患名
1 サンくん 15 M 停留精巣
2 マイくん 4 M 停留精巣
3 ミナちゃん 7 F 熱性けいれん
4 ソフィーくん 0 M 火傷
5 キムロアンちゃん 12 F 卵巣嚢腫
6 ディーモくん 9 M 細気管支炎



今月の救われた命

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